2008年06月01日

赤い花の写真

以前に勤めていた会社の

送別会に行って来た。

僕と同期入社の女の子が、

5月いっぱいで辞めることになったのだ。

僕はその会社を辞めてもう半年ほど経つが、

いまだにこういう誘いがかかることが嬉しかった。

用事があったために、

少し遅れて指定された居酒屋に行ってみると、

そこには懐かしい顔ぶれがそろっていた。

しかし、ほとんどの人たちは

すでに酔っぱらい、

大騒ぎしていたので、

挨拶するのが精一杯の状況だった。

やっとの思いで自分の席を確保し、

一息ついていると、

「おう、元気にしているのか?」

と今回の主役の女の子が話しかけて来た。

酒のせいで顔は真っ赤で、

ビールを片手に、口にはスルメをくわえていた。

「うん。元気にしてるよ」

と僕が言うと、

女の子はウンウンと頷いているようだった。

男顔負けのいさましさだ。

だが、彼女は会社にいる頃も大体こんな感じだった。

同期の飲み会を企画していたのも彼女だったし、

いつもみんなを笑わせていたのも彼女だった。

だからとても人に好かれていた。

実を言えば、

僕は少し淡い恋心のような感情を、

この女の子に対して持っていた………。

懐かしい思い出をお互いに話したあと、

彼女は僕のグラスにビールを注ぎながら

「実はあんたにずっとお礼をしたかった」

と不意に言った。

僕が驚いて

「なんで?」

と言うと、女の子は話しはじめた。

「……私が仕事でミスして落ちこんでいた時、

 あんたは私に赤い花の写真をくれたよね?

 なぜかその時、

 それがすごい嬉しくて、

 私、あのあと、トイレでずっと泣いていたんだよ………」

確かにそういうことがあった。

いつも元気な彼女がめずらしく落ちこんでいるので、

僕はたまたま持っていた

現像したての写真を彼女にあげたのだ。

しかし、そのあとトイレで泣いていたとは知らなかった。

意外に女性らしい面もあるもんだ……。

「そうか。別にそんなこと気にしなくていいよ」

と僕が言うと

「まあ、そうだね」

と彼女は笑顔で言った。

それからやがて、誰かが彼女を呼んで、

彼女はビールグラスを持って向こう側の

にぎやかグループの方へ行ってしまった。

とり残された僕は、

近くにいる人と他愛ない会話をすることにした。

…………………………。

二次会があるという話だったが、

僕は一次会が終了した時点でこっそりと帰ることにした。

やっぱり僕にはああいう飲み会は向いていなかった。

おとなしい僕がいたって、

きっと誰も楽しくないんだ。

僕は一人でトボトボと夜の街を歩いていた。

このまますぐに家に帰ってもよかったのだが、

なんか寂しくて、

帰りたくないような気分だった。

しばらく歩いていると、

僕の携帯電話が鳴りはじめた。

見るとそれはさっきの彼女からだった。

「もしもし…」

と電話にでると彼女は大声で話しはじめた。

「なんで帰るんだよ!バカ!

 私の送別会だぞ!」

「ああ……ごめん」

僕は何と言っていいかわからず

とりあえずあやまった。すると、

「ごめんじゃないよ!」

と言って彼女はさらに続けた。

「もう!相変わらずだね!

 最後だから言うけどね………。

 …………あのね、私はあんたが好きだったんだよ!

 あんたのことが大好きだったの!

 でも、もう遅いからね!

 私はもう彼氏いるから!

 残念でした!ドンカン!バカ!」

それで電話は切れた。

僕は驚き、

それから、

うるさいこの酔っぱらいが、と思った。

……週末の夜の街は

とてもにぎやかだった。

僕は歩きながら、

彼女の姿を想像した。

楽しそうに、幸せそうに、

僕の隣を歩いている姿を。

けっこうお似合いだったかもしれないなと

僕は微笑んで、

それから家に帰ることにした。








 





 


posted by kodds at 20:08| Comment(9) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
koddsさんの優しい気持ち、ちゃんと彼女に伝わってたんだね。

タイミングって、ホントに大事だね。
大事だから、合わせるのは難しいのかもしれないね。
Posted by ともっち at 2008年06月01日 21:00
二次会前にコソっと帰る、
他の人や場の雰囲気を気遣った
koddsさんのそういう所は素敵です
僕にも少し分けて頂きたいくらいですw

でも、もう少し意地を張ってみるのはいかがでしょう?
嫌な事もあるかもしれませんが、良いこともあると思います
新しいことを試してみる価値は、大いにあると思います!
Posted by パイライト at 2008年06月01日 21:48
少し切ないけど、
いい想い出になるすてきなお話ですね。
心の隅っこがあったかくなる感じがします。
Posted by びっけ at 2008年06月01日 21:51
何か切ない話ですね。
人の気持ちって中々わからないものですよね。
その女性に対してや周りへのさり気ない気遣い、素晴らしいと思いました。
Posted by トグサ at 2008年06月01日 22:22
一度コメント頂いたときからずっとファンです。
koddsさんのブログはとてもドラマチック^^
koddsさんの世界に引き込まれちゃいます。
次回の更新楽しみにしています!
Posted by SHIN at 2008年06月01日 22:33
良い話ですね〜〜
すっかり引き込まれてしまいました!
そんなkoddsさんがすてきだと思います。
Posted by la+ at 2008年06月02日 22:18
 その女性は本当に素直で素敵な方ですね。
駆け引きとかなく、思いをはっきり伝えられる人の強さって好きです。
 それが過去でも伝える事っていいですよね。
Posted by ワンコが息子ママです at 2008年06月03日 01:17
青春ってかんじがしますね

何気ないやさしさのサプライズ

いいですね^^


主賓の彼女は強いですね

憧れてしまいます

私自身 弱い面が多いので支えてほしい
って思ってしまうのかもしれません

Posted by しーいんぐらいふ at 2008年06月03日 05:51
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Posted by ロレックス 買取 at 2013年07月27日 20:27
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